こんにちは、小幡和輝です。
僕は約10年間の不登校を経験しました。当時学んでいたのがフリースクールで、そこで過ごした時間が今の自分をつくったと思っています。その後は定時制高校を経て、国立大学に進学しました。いまはオンラインフリースクール「クラスジャパン小中学園」の代表として、これまでに2000人以上の不登校の子どもたちをサポートしてきました。
この記事は2019年に書いたものを、2026年9月に全面的に書き直しています。
熊本を調べ直して、最初にお伝えしたいことが2つあります。
ひとつは良い話です。熊本県は、フリースクール等の民間施設24件の一覧を公表しています(令和8年3月現在)。教育支援センターの一覧(48施設)、保護者の会の一覧もあわせて出しています。探す出発点が整理されている県です。
もうひとつは注意してほしい話です。熊本県の「補助金」は、フリースクールの月謝が安くなる制度ではありません。ネット上の情報ではここが混同されがちなので、後半で正確に説明します。
そして、熊本の民間施設は料金を公表しているところがほとんどありませんでした。今回調べた範囲では、月謝をサイトに明示している施設はゼロです。これは熊本を検討するうえで前提として知っておいてください。
そのうえで、大前提をひとつ。フリースクール選びは「どこがいいか」ではなく「どのタイプがうちの子に合うか」で考えたほうが、うまくいきます。評判のいい場所に入れても、その子がいま必要としているものと違えば続きません。
熊本のフリースクールは、大きく4つのタイプに分かれる
同じ「フリースクール」という名前でも、中でやっていることはかなり違います。おおまかに分けると次の4つです。
学習支援型は、勉強の遅れを取り戻すことに重心があります。個別指導が中心で、進路の相談にも強い。
居場所型は、まず安心して過ごせる場所をつくることを大事にします。何をするかは本人が決める。勉強しない日があってもいい。
体験活動型は、自然体験や農業、ものづくりといった活動が軸になります。熊本はこのタイプが充実しています。
訪問・オンライン型は、通わずに家で受けられる形です。
タイプに優劣はありません。そして、いま合うタイプと半年後に合うタイプは変わります。最初の一つで決めきらなくていいんです。
タイプ1:体験活動型|熊本はここが強い
おおあそ未来の杜(大津町)
2024年4月にできた、比較的新しい場所です。午前は座学、午後は自然体験・スポーツ・農業・自動車整備・社会科見学。送迎と給食があります。
注目してほしいのは、運営しているのが不登校を経験した人だという点です。
これは大きな違いを生みます。不登校の子が何に困っているかを、説明されなくてもわかる。朝起きられないことを責めない。「明日は来られる?」と聞かない。経験した人にしかわからない距離感があります。
そして「自動車整備」がプログラムに入っているのも面白い。教科の勉強に拒否反応がある子でも、車いじりなら手が動く。そこから数学や物理につながることがあります。
送迎と給食があるのも実務的に大きな点です。親の送迎負担と、昼食の準備がなくなります。
NPO法人くまもとゼロスクール(御船町+県内4拠点)
自然体験を軸にしたオルタナティブスクールです。本校は御船町ですが、熊本市東区・菊池市・玉名市にも分校があります。
県内に4拠点というのは、熊本ではかなり珍しい形です。多くの施設は1か所だけなので、住んでいる場所によっては通えません。複数拠点があるということは、県北(玉名)、県央(熊本市・御船)、県北東(菊池)と、通える範囲が広いということです。
フリースクールさなぎのもり(御船町)
NPO法人生活と教育が運営しています。「衣食住の基礎に関わる体験的な活動」を掲げています。対象は小中高生。
「衣食住」を学びの中心に置くという発想が、僕は好きです。ごはんを作る、服を繕う、場所を整える。これは生きるために必要なことで、しかもやればすぐに結果が見えます。勉強のように、努力しても成果が見えるまで時間がかかるものとは違う。自信を取り戻す最初の一歩として、とても理にかなっています。
オルタナティブスクールCHITTA(熊本市北区)
午前は5教科、午後は習い事を選択する形です。ダンス、ギター、プログラミング、ヨガ。そして有機給食を出しています。
午前は勉強、午後は好きなこと、という構成は、生活リズムをつくるうえで機能しやすい形です。
ひとつ注意点です。出席扱いについて、公式サイトには「出席日数が取得できるよう学校と連携を図っていきます」という表現がありました。これは今後の方針であって、実績の明記ではありません。出席扱いが必要な方は、必ず直接確認してください。
タイプ2:居場所型・訪問型|まず安心できる場所から
NPO法人フリースクール地球子屋(てらこや/熊本市中央区)
今回調べたなかで、熊本で最も明確に出席扱いについて書いている施設でした。公式サイトに「熊本市、熊本県立の学校の場合には、出席にもなる」と記載があります。
特徴は幅の広さです。居場所と学習支援に加えて、家庭訪問とオンラインにも対応しています。月1回の「不登校学習会」と「親の会」も開いています。
対象年齢が小学生から20代・30代までと幅広いのも特徴です。これは、その子が大きくなってもつながり続けられるということです。中学を卒業したら終わり、ではない。長く関われる場所があることの意味は、当事者だった自分にはよくわかります。
熊本でどこから見学するか迷ったら、僕はここから相談してみることをおすすめします。
ARK(アーク)/ARK セカンド(熊本市北区)
県の一覧に「福祉・医療・教育従事者が揃った専門性のあるフリースクール」として掲載されています。ARKセカンドは中高生向けで、社会的自立に特化しています。
お子さんに発達の特性がある、医療にかかっている、といった事情がある場合は、専門職がそろっている場所を選ぶ意味が大きくなります。
NPO法人わらびかみ(天草市)
天草の居場所です。「いこいスペース∞こあ まるちゃん家」という名前で運営していて、制服リユース、フードバンク、毎週水曜の子ども食堂も行っています。
天草は熊本市から距離があり、選択肢が限られる地域です。地域に根を張って複数の事業をやっている団体は、その地域の家庭にとって貴重な窓口になります。
タイプ3:オンライン型|通える場所が近くにないなら
熊本の民間施設は熊本市とその周辺(大津町、御船町、菊池市、玉名市)に集まっています。天草、人吉・球磨、阿蘇の一部からは、毎日通うのが現実的でない地域があります。
熊本市「フレンドリーオンライン」(熊本市在住の方・無料)
民間ではなく公的な支援ですが、先に紹介します。熊本市が運営するオンラインの教育支援で、本荘小学校・芳野中学校の2拠点から3つのスタジオで配信しています。学習アプリ「すらら」を使った自習の時間もあります。
活動時間は9時30分から15時(水曜は午前のみ)。タブレットは学校から貸与されます。そして1か月の体験期間があり、毎月20日までの申し込みで翌月から始められます。
全国的に見ても、市が自前でここまでのオンライン支援を持っている例は多くありません。熊本市にお住まいなら、まずこれを検討する価値があります。無料です。
クラスジャパン小中学園(オンライン)
冒頭に書いたとおり、僕が代表を務めているサービスです。完全オンラインのフリースクールで、家にいながら参加できます。在籍校で出席扱いになる仕組みを整えていて、これまで2000人以上の子どもをサポートしてきました。
熊本市以外の地域にお住まいの方、近くに通える場所がない方、まだ外に出るのが難しい段階のお子さんには、入口として考えてもらえたらと思います。
見学のときに、必ず聞いてほしい5つのこと
ホームページとパンフレットだけでは、その場所の本当のところはわかりません。運営する側になって、余計にそう思うようになりました。見学に行ったら、この5つは必ず聞いてください。
1. 費用はいくらですか。何が含まれていますか
熊本ではこれを最初に聞いてください。今回調べた範囲で、月謝を公式サイトに書いている熊本の施設はひとつもありませんでした。ホームページを見ても料金がわからないのが前提です。入会金、月謝、教材費、活動費、送迎費、給食費。総額でいくらかを、電話で聞いてから見学に行ってください。
2. 在籍校への報告書は出せますか。実績はありますか
ここも熊本では重要です。「今後、連携を図っていきます」という書き方をしている施設があります。それは実績ではありません。出席扱いが必要なら、「これまでに何校で認められましたか」まで聞いてください。地球子屋のように明確に書いている施設もあります。
3. 送迎はありますか。範囲はどこまでですか
熊本は施設が熊本市周辺に集まっています。片道1時間を週5日、親が送迎し続けられるか。ここを甘く見積もると、半年で家族が疲れます。おおあそ未来の杜のように送迎がある施設もあります。範囲を必ず確認してください。
4. 一日の流れを具体的に教えてください
時間割があるのか、来た子が自由に過ごすのか。ここがタイプの違いそのものです。「自由です」と言われたら、実際に昨日はどんな一日だったかまで聞いてみてください。
5. いま何人くらい通っていて、どの学年が多いですか
定員ではなく実際の人数です。中学生の子が行って、来ているのが小学生ばかりだと居づらい。その逆もあります。
そしてもう一つ。必ずお子さん本人を連れて行ってください。親御さんが気に入った場所と、本人が居心地よく感じる場所は、驚くほど一致しません。本人が玄関で足が止まるなら、それは答えです。
熊本の補助金について。ここは正確に書きます
熊本県には「不登校児童生徒に対する経済的支援推進事業」という制度があります(文部科学省の調査研究事業)。名前だけ見ると利用料の補助に見えますが、違います。ここを間違えると、あてにしていたお金が出ないという事態になります。
正確に書きます。
補助の対象になるのは、通うための交通費と、体験活動や実習にかかった個人負担の実費の一部です。月謝・利用料そのものは対象外です。
金額は前期(6〜9月)2万円、後期(10〜1月)2万円、年間で最大4万円。
そして対象になるための条件が5つあり、すべてを満たす必要があります。
1つめ、熊本県内に住所があること。ただし熊本市は対象外です。2つめ、教育支援センターまたはフリースクール等で学んでいること。3つめ、在籍校と連携して指導要録上すでに「出席扱い」になっていること。4つめ、市町村から就学援助の認定を受けていること。5つめ、文部科学省の調査アンケートに協力すること。
つまり、この制度は「就学援助を受けていて、すでに出席扱いが認められている家庭の、交通費を支える」ための制度です。これから通い始める人の月謝を下げる制度ではありません。
申請期間も決まっています。前期が2026年10月5日から16日、後期が2027年2月1日から12日です。予算を超えた場合は、均一の割合で調整されます。
誤解を恐れずに言えば、条件が厳しい制度です。ただ、条件に当てはまる方にとっては年4万円は小さくありません。該当しそうな方は、お住まいの市町村の教育委員会に確認してください。
熊本市には独自の利用料補助制度が見当たりませんでした。市町村レベルの利用料補助も確認できませんでした。
そのうえで、費用を抑える方法を3つ。
ひとつめ、熊本市にお住まいなら「フレンドリーオンライン」(無料)。前半で紹介した市のオンライン支援です。
ふたつめ、市町村の教育支援センター。熊本県内に48施設あります(熊本市を除く市町村設置分)。公立なので原則無料です。宇土市「ほっとスペース」、玉名市「タマにゃん教室」、山鹿市3教室、合志市4教室、天草市2教室など、地域に密着した形で設置されています。民間を探す前に、まずここを見学する価値があります。
みっつめ、放課後等デイサービス。発達に特性があって受給者証が取れる場合、世帯年収が約890万円までなら月額上限4,600円、非課税世帯は無料です。
在籍校で出席扱いにしてもらうには
フリースクールに通った日を、学校の出席として認めてもらえる制度があります。文部科学省が要件を定めていて、最終的には在籍校の校長先生の判断で決まります。
熊本には、この点で心強い材料があります。熊本市が「不登校児童生徒の指導要録上出席扱いに係るガイドライン」を公表していることです。
ガイドラインでは、出席扱いになりうる形を3つに整理しています。教育支援センター(フレンドリー)、フリースクール等の民間施設、自宅でのICT学習。つまり、市として「この3つは出席扱いになりうる」と公式に示しているということです。
これは保護者にとって大きな武器になります。学校と話すときに「熊本市のガイドラインに書かれています」と言えるからです。制度があることを知っているかどうかで、交渉のしやすさがまったく変わります。
手順はシンプルです。まず、通おうとしているフリースクールに「在籍校への報告書を出してもらえますか」と確認します。次に、在籍校の担任の先生に相談します。そのうえで、毎月の活動報告が学校に届く形をつくる。これで校長先生が認めれば、出席として記録されます。
なお、熊本県には学びの多様化学校(旧・不登校特例校)の設置がありません。この点は、他県より選択肢が限られます。
ひとつだけ言わせてください。出席日数のために子どもを追い立てないでほしいと思っています。出席扱いはあくまで、その子が安心して次に進むための道具です。目的ではありません。
熊本全域から、もっと網羅的に探したい方へ
この記事では、特徴がはっきりしている場所に絞って紹介しました。県が公表している一覧には24件が載っています(令和8年3月現在)。ただし県は「県内すべての民間施設ではありません」と注記しています。お住まいの市町村から探したい方は、明光フリースクール公式メディアの熊本県のフリースクールと補助金一覧もご覧ください。
最後に
僕が不登校だったころ、親は相当悩んだと思います。でも最終的に「行かなくていい」と言ってくれました。あの一言がなかったら、今の僕はいません。
学校に行かない選択が、その子の可能性を狭めていいはずがありません。学ぶ場所は、学校以外にもあります。フリースクールはその一つです。
熊本を調べていて印象に残ったのは、不登校を経験した人が自分で場所をつくっていることでした。おおあそ未来の杜がそうです。当事者だった人が大人になって、次の子どものために場所を開く。僕自身も似たようなことをしているので、こういう場所を見つけると勝手に励まされます。
そして繰り返しますが、最初に選んだ場所が合わなくても、変えていいんです。合わなかったのは、その子のせいでも、その場所のせいでもありません。ただ、まだ出会えていないだけです。
この記事が、その出会いの手がかりになればうれしいです。





























