こんにちは、小幡和輝です。
僕は約10年間の不登校を経験しました。当時学んでいたのがフリースクールで、そこで過ごした時間が今の自分をつくったと思っています。その後は定時制高校を経て、国立大学に進学しました。いまはオンラインフリースクール「クラスジャパン小中学園」の代表として、これまでに2000人以上の不登校の子どもたちをサポートしてきました。
この記事は2019年に書いたものを、2026年9月に全面的に書き直しています。
鹿児島を調べ直して、いちばん印象に残ったのは料金の設計の多様さでした。
鹿屋市のスタディルームは1日500円。しかも温かい昼食込み。沖永良部島のダ・ヴィンチは1回1,000円、月額上限7,000円。一方で鹿児島市の敬進フリースクールは月28,000円です。
そして鹿児島には、他県にない事情があります。離島です。奄美大島の名瀬にフリースクールがあり、沖永良部島(和泊町)にも子どもの居場所があります。本土から船と飛行機でしか行けない場所に、ちゃんと受け皿がある。これは鹿児島ならではです。
もうひとつ良い話を。鹿児島県教育委員会は、県内のフリースクール等22団体の公式サイトへのリンクを公表しています。鹿児島市も独自に15〜16施設を一覧にしています。探す出発点が用意されている県です。
そのうえで、大前提をひとつ。フリースクール選びは「どこがいいか」ではなく「どのタイプがうちの子に合うか」で考えたほうが、うまくいきます。評判のいい場所に入れても、その子がいま必要としているものと違えば続きません。
鹿児島のフリースクールは、大きく4つのタイプに分かれる
同じ「フリースクール」という名前でも、中でやっていることはかなり違います。おおまかに分けると次の4つです。
学習支援型は、勉強の遅れを取り戻すことに重心があります。個別指導が中心で、進路の相談にも強い。
居場所型は、まず安心して過ごせる場所をつくることを大事にします。何をするかは本人が決める。勉強しない日があってもいい。
体験活動型は、自然体験や農業、ものづくりといった活動が軸になります。
訪問・オンライン型は、通わずに家で受けられる形です。鹿児島は面積が広く離島も多いため、このタイプの重要度が他県より高くなります。
タイプに優劣はありません。そして、いま合うタイプと半年後に合うタイプは変わります。最初の一つで決めきらなくていいんです。
タイプ1:学習支援型|勉強と進路が心配なら
スタディルーム 中等部(鹿屋市)
今回の調査で、いちばん紹介したいと思った場所です。理由は3つあります。
ひとつめ、費用が1日500円。しかも温かい昼食込みです。送迎も片道100円、鹿屋のバス停からは無料。この価格設定で運営しているということが、そもそもどういう姿勢なのかを物語っています。
ふたつめ、公認心理師が常勤していることです。心理の国家資格を持った人が毎日いる、というフリースクールは全国的にも多くありません。不安が強い、医療にかかっている、発達に特性がある。そういうお子さんにとって、これは大きな違いになります。
みっつめ、出席扱いについて公式に書いていることです。「所属する中学校の校長の許可があれば、一定の条件の下に出席扱いになることもあります」と、制度を正確に説明しています。
少人数の個別指導が中心で、対象は中学生。鹿屋市および大隅半島にお住まいの方は、まずここに問い合わせてみてください。
敬進フリースクール(鹿児島市ほか2校)
費用を明示している数少ない施設です。個別指導コース 月28,000円(税込)。そして「維持費、冷暖房費や年会費といったその他の費用は一切ありません。教材費も実費のみ」と書いています。
この「その他の費用はありません」という一文を、僕は高く評価します。フリースクールを探していると、月謝以外に入会金、施設維持費、冷暖房費、教材費、行事費と積み上がって、実際の負担が想定の1.5倍になることがよくあります。最初から総額がわかることは、それだけで誠実です。
出席扱いについても「出席認定」と明記しています。教育カウンセラーによる相談があり、保護者の相談は無料です。対象は中学生・高校生。
桜心学院 中等部(鹿児島市西千石町)
学習支援が中心で、進路対策・検定試験対策・体験学習を行っています。対象は中学生(高等部は通信制高校生向け)。
グッジョブスクール(鹿児島市泉町)
ネット学習、プログラミング、調理、製作実験、ソーシャルスキルトレーニング、イベント。学習支援を軸に幅広く活動しています。対象は小・中・高。
ひとつ注意点です。出席扱いについては「小学校と連携した児童の出席認定取得を目標」という表現で、目標であって実績の明記ではありません。必要な方は直接確認してください。
タイプ2:居場所型|まず安心して過ごせる場所を
NPO法人しののめフリースクール(鹿児島市郡元)
興味・関心に沿った支援を軸にした居場所です。家庭訪問支援があります。子ども食堂などの体験活動も行っていて、月曜から金曜の10時から17時に開いています。
対象が未就学から一般までと幅広いのも特徴です。中学を卒業したら終わり、ではない場所です。
フリースペース大谷(鹿児島市新町)
居場所を中心に、個別学習サポート、探究型学習、個別の学習スペース、保護者との連携を行っています。対象は小中高生。
そらひフリースクール(姶良市)
姶良市にある居場所+学習支援の場所です。心のケアについては専門家を紹介する体制をとっていて、講師による学習指導もあります。平日10時から17時。対象が小学校高学年から高校生と明示されています。
姶良市は鹿児島市の北隣。鹿児島市内が満員だったり、市内に行きたくない事情があるお子さんにとって、選択肢になります。
やさしいハリネズミの楽校(鹿児島市西谷山ほか2校)
HSC(ひといちばい繊細な気質の子ども)を対象にしている点が特徴です。対象は小・中学生。
音や光や人の感情に敏感で、集団のなかにいるだけで消耗してしまう子がいます。そういう子にとって、最初からその前提で設計された場所があることの意味は大きい。「みんな我慢してるよ」と言われずに済むからです。
タイプ3:体験活動型|自然のなかで立て直す
NPO法人子育てふれあいグループ自然花(枕崎市)
親子の自然体験、農業体験、地域のくらし体験、宿泊活動を行っています。枕崎は薩摩半島の南端。海と山に囲まれた環境です。
森の学校 楠学園 小中学部(姶良市蒲生町)
体験を通して「ものの見方・考え方」を育てることを掲げたオルタナティブスクールです。対象は小・中学生。
NPO法人どんぐり自然学校(鹿児島市吉野町)
自然体験と、体験を通した学びを軸にしています。対象は小・中学生。
離島にも、場所があります
ここは鹿児島の記事だからこそ、必ず書いておきたい部分です。
NPO法人フリースクールMINE(奄美市名瀬)
奄美大島にあるフリースクールです。サドベリースクール型で、「何もしないことも保証」すると掲げています。併設の「デジタルベースMINE」はデジタル創作の場で、対象は小5から高3(10〜18歳)。
「何もしないことを保証する」と書ける場所は、本当に強い場所です。不登校の子がいちばん必要としているのは、何もしなくていい時間だったりします。それを制度として保証していると明言できるのは、覚悟がないとできません。
なお、移転にともなって活動日数と月謝が改定されたとの記載があり、金額は非公開です。問い合わせてください。
NPO法人心音「子どもの居場所ダ・ヴィンチ」(大島郡和泊町・沖永良部島)
沖永良部島にある居場所です。農業・釣り・キャンプといった体験活動に加え、学習支援、運動、生活スキルも行っています。
費用は1回1,000円、月額上限7,000円。入会金なし。島の家庭にとって無理のない設計です。
島にお住まいの方にとって、島内に選択肢があるかどうかは決定的です。本土に出るという選択は、家族ごと生活を変えることを意味します。島に場所があるということの重みは、そこにあります。
タイプ4:訪問・オンライン型|通える場所が近くにないなら
鹿児島は本土だけでも南北に長く、さらに離島を抱えています。すべての地域に通える施設があるわけではありません。
鹿児島市の学習支援員派遣(鹿児島市在住の方)
民間ではなく市の制度ですが、紹介します。鹿児島市はオンラインによる学習支援を中心とし、必要に応じて訪問での学習支援も実施しています(訪問時は保護者等の在宅が原則)。
オンラインと訪問を組み合わせている公的支援は、全国的にも多くありません。鹿児島市にお住まいなら、学校を通して確認してみてください。
クラスジャパン小中学園(オンライン)
冒頭に書いたとおり、僕が代表を務めているサービスです。完全オンラインのフリースクールで、家にいながら参加できます。在籍校で出席扱いになる仕組みを整えていて、これまで2000人以上の子どもをサポートしてきました。
離島や、大隅半島・薩摩半島南部など近くに通える場所がない地域にお住まいの方、まだ外に出るのが難しい段階のお子さんには、入口として考えてもらえたらと思います。
見学のときに、必ず聞いてほしい5つのこと
ホームページとパンフレットだけでは、その場所の本当のところはわかりません。運営する側になって、余計にそう思うようになりました。見学に行ったら、この5つは必ず聞いてください。
1. 費用の総額はいくらですか
鹿児島ではこれを最初に聞いてください。1日500円の場所と月28,000円の場所が同じ県内にあります。しかも料金を公表していない施設も多い。月謝のほかに入会金、教材費、活動費、送迎費、昼食代がかかるのかどうか。総額で聞いてください。敬進フリースクールのように「その他の費用は一切ありません」と明示している場所もあります。
2. 送迎はありますか。範囲はどこまでですか
鹿児島は移動距離の問題が大きい県です。片道1時間を週5日、親が送迎し続けられるか。ここを甘く見積もると、半年で家族が疲れます。スタディルームのように送迎が片道100円という場所もあります。必ず確認してください。
3. 在籍校への報告書は出せますか。実績はありますか
出席扱いを考えているなら必須の確認です。鹿児島では敬進フリースクール、スタディルーム、みんなの家ふらっとなどが公式に書いています。一方で「目標としています」という表現の施設もあります。それは実績ではありません。「これまで何校で認められましたか」まで聞いてください。
4. スタッフに専門職はいますか
鹿児島ならではの確認です。スタディルームには公認心理師が常勤しています。お子さんの不安が強い、医療にかかっている、発達に特性があるといった事情がある場合、ここで受けられる支援の質が変わります。
5. いま何人くらい通っていて、どの学年が多いですか
定員ではなく実際の人数です。中学生の子が行って、来ているのが小学生ばかりだと居づらい。その逆もあります。
そしてもう一つ。必ずお子さん本人を連れて行ってください。親御さんが気に入った場所と、本人が居心地よく感じる場所は、驚くほど一致しません。本人が玄関で足が止まるなら、それは答えです。
鹿児島の補助金と、公的な支援について
正直にお伝えします。鹿児島県にも鹿児島市にも、フリースクールの利用料を補助する制度は確認できませんでした。県の「不登校支援ガイド」にも、鹿児島市のフリースクール情報ページにも、補助・助成の記載はありません。
鹿児島市のページには「利用料や出席扱いの詳細については記載していない」という断り書きがあります。つまり情報は出すが、費用は各家庭で確認してください、というスタンスです。
ただ、鹿児島の場合はこう考えてください。制度で補うかわりに、施設側の料金設定そのものが抑えられている。1日500円で昼食込み、1回1,000円で月上限7,000円。これは補助金の有無を超えた実質的な答えです。
そのうえで、費用を抑える方法を3つ挙げておきます。
ひとつめは鹿児島市の「フレンドシップ」(教育支援センター)です。市内に5か所あります。長田中学校内、南中学校内、谷山中学校内、勤労青少年ホーム内、城西中学校内。公立なので原則無料です。政令市以外で市内に5か所というのは、全国的に見ても多い部類です。在籍校を通して申し込むのが一般的なので、まず担任の先生に聞いてみてください。
ふたつめは鹿児島市の学習支援員派遣です。オンライン中心で、訪問にも対応しています。これも無料の公的支援です。
みっつめは放課後等デイサービスです。発達に特性があって受給者証が取れる場合、世帯年収が約890万円までなら月額上限4,600円、非課税世帯は無料で使えます。日中の居場所として機能している事業所は県内各地にあります。
なお、鹿児島市は令和3年度から、市立学校の不登校児童生徒が利用している民間施設との意見交換会を年2回開いています。市と民間が定期的に話す場があるということは、連携の土台があるということです。これは補助金とは別の形の「行政の本気度」だと思います。
在籍校で出席扱いにしてもらうには
フリースクールに通った日を、学校の出席として認めてもらえる制度があります。文部科学省が要件を定めていて、最終的には在籍校の校長先生の判断で決まります。
手順はシンプルです。まず、通おうとしているフリースクールに「在籍校への報告書を出してもらえますか」と確認します。次に、在籍校の担任の先生に「この場所に通いたい」と相談します。そのうえで、フリースクールから毎月の活動報告が学校に届く形をつくる。これで校長先生が認めれば、出席として記録されます。
鹿児島で有利なのは、県教育委員会が22団体へのリンクを公表していることです。学校に説明するとき「県のページに載っている施設です」と言えるのは、交渉の材料になります。
ひとつ注意点を書いておきます。施設のなかには「県教育委員会認定のフリースクール」と自称しているところがあります。ただし、鹿児島県にフリースクールの認定・認証制度があることは、県の公表資料からは確認できませんでした。その表現はあくまで施設側の説明です。学校との交渉材料にする前に、内容を確認してください。
もうひとつ。鹿児島には学びの多様化学校(旧・不登校特例校)が1校あります。鹿児島城西高等学校のドリームコース(日置市)です。ただし高校段階のコース指定型で、小中学生向けではありません。高校進学を考える段階で、選択肢として覚えておいてください。
そしてかごしま教育ホットライン24(0120-783-574)とSNS相談があります。中学生以上が対象のLINE・Web相談です。フリースクールを探す前段階として、まず誰かに話すという使い方ができます。
ひとつだけ言わせてください。出席日数のために子どもを追い立てないでほしいと思っています。出席扱いはあくまで、その子が安心して次に進むための道具です。目的ではありません。
鹿児島全域から、もっと網羅的に探したい方へ
この記事では、特徴がはっきりしている場所に絞って紹介しました。県教育委員会は22団体、鹿児島市は15〜16施設を公表しています。お住まいの市町村から探したい方は、明光フリースクール公式メディアの鹿児島県のフリースクールと補助金一覧もご覧ください。
最後に
僕が不登校だったころ、親は相当悩んだと思います。でも最終的に「行かなくていい」と言ってくれました。あの一言がなかったら、今の僕はいません。
学校に行かない選択が、その子の可能性を狭めていいはずがありません。学ぶ場所は、学校以外にもあります。フリースクールはその一つです。
鹿児島を調べていて、何度も手が止まったのは「1日500円、温かい昼食込み」という一行でした。この金額では、どう考えても利益は出ません。それでも続けている人が鹿屋にいる。奄美にも、沖永良部島にも、同じような人がいる。
制度がない県だと書きましたが、制度の前に人がいる県だと思います。
そして繰り返しますが、最初に選んだ場所が合わなくても、変えていいんです。合わなかったのは、その子のせいでも、その場所のせいでもありません。ただ、まだ出会えていないだけです。
この記事が、その出会いの手がかりになればうれしいです。





























