こんにちは、小幡和輝です。
僕は約10年間の不登校を経験しました。当時学んでいたのがフリースクールで、そこで過ごした時間が今の自分をつくったと思っています。その後は定時制高校を経て、国立大学に進学しました。いまはオンラインフリースクール「クラスジャパン小中学園」の代表として、これまでに2000人以上の不登校の子どもたちをサポートしてきました。
奈良を調べていて、いちばんお伝えしたいのは民間のフリースクールのことではありません。
奈良市は、公設のフリースクールを4施設も運営しています。しかも授業料は無料です。HOP青山、HOPあやめ池、教育支援センター「HOP」、KidsHOP。活動内容によって活動費がかかる場合はありますが、基本的に費用はかかりません。学校にはHOPから活動報告書が提出される運用になっています。
奈良市にお住まいなら、まずここに相談してみてください(奈良市教育センター 教育支援課 0742-93-8199)。
もうひとつ、広陵町が2026年度からフリースクール利用料の助成を始めました。上限は月2万円で、東京都と同水準です。県内で制度を確認できたのはここだけでした。
そのうえで、大前提をひとつ。フリースクール選びは「どこがいいか」ではなく「どのタイプがうちの子に合うか」で考えたほうが、うまくいきます。評判のいい場所に入れても、その子がいま必要としているものと違えば続きません。
なお2019年に紹介していた5か所のうち1か所は公式サイトが消え、1か所はフリースクールではなく学習塾でした。現在も運営が確認できた場所に絞ってお伝えします。
奈良のフリースクールは、大きく4つのタイプに分かれる
同じ「フリースクール」という名前でも、中でやっていることはかなり違います。おおまかに分けると次の4つです。
学習支援型は、勉強の遅れを取り戻すことに重心があります。個別指導が中心で、進路の相談にも強い。
居場所型は、まず安心して過ごせる場所をつくることを大事にします。何をするかは本人が決める。勉強しない日があってもいい。
体験活動型は、農業やものづくり、冒険教育といった活動が軸になります。
訪問・オンライン型は、通わずに家で受けられる形です。まだ外に出るのが難しい段階では、これが唯一の入口になることもあります。
タイプに優劣はありません。そして、いま合うタイプと半年後に合うタイプは変わります。最初の一つで決めきらなくていいんです。
タイプ1:居場所型|まず安心できる場所がほしいなら
奈良YMCA「心のフリースクール」(奈良市)
奈良市西大寺国見町の奈良YMCA本部事務局内にあります。活動日は月・火・水・金・土の週5日と、通う日数の選択肢が多いのが特徴です。
YMCA学院高等学校(通信制)が併設されているので、高卒資格の取得まで見通せます。青年ボランティアが「子どもたちの良き相談役」として関わる体制もあります。
ひとつ注意点があります。公式サイトのフリースクール専用ページが現在404で表示されません。法人のサイト自体は活発に更新されていて、施設一覧にもフリースクールの記載があるので運営は続いていますが、対象学年と費用がウェブ上で確認できません。問い合わせて確認してください。
フリースペースSAKIWAI(奈良市)
近鉄新大宮駅から徒歩2〜3分。ここは対象が女性に限定されています。生きづらさ(不登校、ひきこもり、ニート、発達障害など)を抱えた女性のための場所で、年齢制限はありません。男子は対象外である点にご注意ください。
開催は月2回、火曜の13時から17時のみ。おしゃべり、ゲーム、読書、お菓子や食事づくり、外出など、過ごし方は自由です。学習支援の機能はありません。
費用は見学・相談が1,000円、参加費が1回500円(18歳未満は1回1,000円)。任意の居場所協力金が月5,000円です。保護者向けの「ふきのとうの会」も第2日曜に開かれています(500円)。
月2回・午後のみなので、日常的な居場所というより「月に一度、家以外の場所に行ってみる」という使い方が合うと思います。女の子で、大きな集団が苦手なお子さんには、貴重な選択肢です。
タイプ2:体験活動型+訪問型|手を動かすことから始めたいなら
NPO法人BLOOM(大和高田市)
正式には「特定非営利活動法人 青少年自立援助センター ブルーム」。奈良でもっとも幅広い支援を持っている団体です。
ひとつの法人で、フリースクール、フリースペース、共同生活(寮)、放課後等デイサービス、就労支援を一体で運営しています。対象は「ひきこもり・不登校・障がい児・障がい者・非行・ニート・若年無業者等」で、義務教育年齢から若年成人まで。
体験活動の中身が個性的です。農業、便利屋、プロジェクトアドベンチャー、レゴロボットプログラミング。そして家庭訪問(訪問型支援)もあります。奈良で訪問を明示しているのは、今回調べたなかではここだけでした。
代々木高校のサテライト教室でもあるので、高卒資格の取得まで見通せます。
営業時間は月曜から土曜の10時から17時(0745-21-4771)。費用は公開されていないため、問い合わせが必要です。
タイプ3:訪問・オンライン型|まだ外に出るのが難しいなら
NPO法人BLOOMの家庭訪問(大和高田市)
前述のとおり、BLOOMは家庭訪問による支援を行っています。まず家に来てもらい、慣れてきたら通う日をつくる。そういう段階的な進め方ができます。
クラスジャパン小中学園(オンライン)
冒頭に書いたとおり、僕が代表を務めているサービスです。完全オンラインのフリースクールで、家にいながら参加できます。在籍校で出席扱いになる仕組みを整えていて、これまで2000人以上の子どもをサポートしてきました。
奈良は南部(吉野・十津川方面)など、通える距離に施設がない地域が広くあります。近くに場所がない方、まだ外に出るのが難しい段階のお子さんには、入口として考えてもらえたらと思います。
奈良市の公設フリースクール「HOP」(無料)
冒頭に書いたとおり、奈良市には公設のフリースクールが4施設あります。もう少し詳しく書きます。
HOP青山、HOPあやめ池、教育支援センター「HOP」、KidsHOPの4つ。授業料等は無料です(活動内容により活動費が発生する場合があります)。
そして重要なのが、学校にはHOPから活動報告書が提出される運用になっていることです。出席扱いにつながる連携がすでに制度として組み込まれている、ということになります。
民間のフリースクールは月2万円から4万円かかるのが相場です。それが無料で、しかも学校との連携も整っている。奈良市にお住まいなら、まずここを検討しない手はありません。
問い合わせは奈良市教育センター 教育支援課(0742-93-8199)です。
見学のときに、必ず聞いてほしい5つのこと
ホームページとパンフレットだけでは、その場所の本当のところはわかりません。運営する側になって、余計にそう思うようになりました。見学に行ったら、この5つは必ず聞いてください。
1. 週に何日、何時から何時まで開いていますか
奈良ではこれを最初に聞いてください。今回紹介した場所も、週5日のところから月2回・午後のみのところまで幅があります。毎日の居場所がほしいのか、月に一度でいいのかで選ぶ先がまったく変わります。
2. 対象は男女どちらも受け入れていますか
奈良ならではの確認です。女性限定の場所があります。逆に言えば、女の子で男子のいる環境が苦手なお子さんには、そこが最適な選択肢になることもあります。
3. 費用はいくらですか
奈良では料金を公開していない施設が目立ちました。今回調べたなかで費用が公式に分かったのはSAKIWAIだけです。必ず電話で確認してから見学に行ってください。
4. 在籍校への報告書は出してもらえますか
出席扱いを考えているなら必須の確認です。奈良では出席扱いについて公式サイトに書いている民間施設がほとんどありませんでした。「出せます」だけでなく、実際の書式や実績を確認してください。
5. 訪問には来てもらえますか
通える場所が限られている奈良では、訪問が現実的な選択肢になります。BLOOMは家庭訪問に対応しています。
そしてもう一つ。必ずお子さん本人を連れて行ってください。親御さんが気に入った場所と、本人が居心地よく感じる場所は、驚くほど一致しません。本人が玄関で足が止まるなら、それは答えです。
奈良の補助金と、公的な支援について
奈良県には、フリースクール利用料を補助する県の制度は見当たりませんでした。県議会では民設フリースクールへの支援充実が議題に上がっていますが(議会だより令和6年2月号)、制度化には至っていません。
県の不登校支援は、「フレキシスクール」(登校日数が年間10日程度の中学生が対象、令和7年1月時点で44名が在籍)と、メタバース空間を活用したオンライン支援が中心です。
市町村レベルでは、広陵町が制度をつくりました。「広陵町フリースクール等利用助成事業」で、利用料等の一部を助成、上限月額20,000円。対象は町立小中学校に在籍する不登校児童生徒の保護者、または広陵町に住民登録があり町立以外の小中学校に在籍する不登校児童生徒の保護者です。令和8年度(2026年度)から始まりました。
対象施設になるには、施設側が町教育委員会に認定申請をして、人権の尊重、安全な施設・人員の確保、在籍校の課業時間内に受け入れができることなど7つの基準を満たす必要があります。問い合わせは広陵町 学校支援室(0745-43-6180)です。
ですので奈良では、費用面は次の順で考えるのが現実的です。まず奈良市なら公設のHOP(無料)。広陵町なら町の助成(月2万円)。それ以外の地域では、放課後等デイサービス(発達に特性があって受給者証が取れる場合、世帯年収が約890万円までなら月額上限4,600円、非課税世帯は無料)や、市町村の教育支援センター(適応指導教室、無料)を確認する。
在籍校で出席扱いにしてもらうには
フリースクールに通った日を、学校の出席として認めてもらえる制度があります。文部科学省が要件を定めていて、最終的には在籍校の校長先生の判断で決まります。
手順はシンプルです。まず、通おうとしているフリースクールに「在籍校への報告書を出してもらえますか」と確認します。次に、在籍校の担任の先生に「この場所に通いたい」と相談します。そのうえで、フリースクールから毎月の活動報告が学校に届く形をつくる。これで校長先生が認めれば、出席として記録されます。
奈良市の公設フリースクールHOPは、この点ですでに運用が確立しています。HOPから学校へ活動報告書が提出されるので、保護者が一から交渉する必要がありません。これは大きな利点です。
民間の施設を探す場合は、奈良県が公表している「生きづらさを感じる子ども・若者のための支援機関ガイド」(2026年9月10日更新)が役に立ちます。相談窓口、カウンセリング機関、自助グループ・親の会、居場所・フリースペース(11機関)、就労支援機関、専門的支援機関、子どもに関する支援機関という章立てで整理されています。県はほかに「若者のための居場所登録制度」も運用しています。
ひとつだけ言わせてください。出席日数のために子どもを追い立てないでほしいと思っています。出席扱いはあくまで、その子が安心して次に進むための道具です。目的ではありません。
奈良全域から、もっと網羅的に探したい方へ
この記事では現在の運営が確認できた場所に絞ったため、紹介した民間施設は3つです。前述の県の支援機関ガイドには11機関の居場所・フリースペースが載っています。お住まいの市町村で探したい方は、明光フリースクール公式メディアの奈良県のフリースクールと補助金一覧もご覧ください。
最後に
僕が不登校だったころ、親は相当悩んだと思います。でも最終的に「行かなくていい」と言ってくれました。あの一言がなかったら、今の僕はいません。
学校に行かない選択が、その子の可能性を狭めていいはずがありません。学ぶ場所は、学校以外にもあります。フリースクールはその一つです。
全国を調べてきて、行政が「補助金を出す」形をとる地域と、「自分たちで場所をつくる」形をとる地域があることが分かってきました。奈良市は後者です。公設のフリースクールを4つ持ち、無料で開き、学校との連携も制度に組み込んでいる。これもひとつの答えだと思います。
そして繰り返しますが、最初に選んだ場所が合わなくても、変えていいんです。合わなかったのは、その子のせいでも、その場所のせいでもありません。ただ、まだ出会えていないだけです。
この記事が、その出会いの手がかりになればうれしいです。





























