こんにちは、小幡和輝です。
僕は約10年間の不登校を経験しました。当時学んでいたのがフリースクールで、そこで過ごした時間が今の自分をつくったと思っています。その後は定時制高校を経て、国立大学に進学しました。いまはオンラインフリースクール「クラスジャパン小中学園」の代表として、これまでに2000人以上の不登校の子どもたちをサポートしてきました。
この記事は2019年に書いたものを、2026年9月に全面的に書き直しています。
岩手を調べ直して、いちばん驚いたのは動物園のなかにフリースクールがあることでした。盛岡市の動物公園ZOOMOのなかにある「ぐるぐるの森」です。日本初だそうです。
そして、岩手には全国に誇っていい数字があります。市町村立の教育支援センターが31か所、27市町村に設置されています。岩手は33市町村ですから、8割以上がカバーされていることになります。隣の青森が60%で止まっていることを考えると、この差は大きい。しかも利用料は基本的に無料です。
もうひとつ。岩手県は民間のフリースクール等18団体の一覧を公表しています(令和8年2月4日更新)。県が「不登校支援ポータルサイト」を持ち、子どもの状態を4段階に分けて支援策を提示するところまでやっています。
正直に書くと、民間施設の料金はほとんど公表されていません。金額が確実にわかったのは2件だけでした。ただ、その2件の内容が対照的で参考になります。
そのうえで、大前提をひとつ。フリースクール選びは「どこがいいか」ではなく「どのタイプがうちの子に合うか」で考えたほうが、うまくいきます。評判のいい場所に入れても、その子がいま必要としているものと違えば続きません。
岩手のフリースクールは、大きく4つのタイプに分かれる
同じ「フリースクール」という名前でも、中でやっていることはかなり違います。おおまかに分けると次の4つです。
学習支援型は、勉強の遅れを取り戻すことに重心があります。個別指導が中心で、進路の相談にも強い。
居場所型は、まず安心して過ごせる場所をつくることを大事にします。何をするかは本人が決める。勉強しない日があってもいい。
体験活動型は、自然体験や動物とのふれあい、ものづくりといった活動が軸になります。岩手はこのタイプが際立っています。
訪問・オンライン型は、通わずに家で受けられる形です。
タイプに優劣はありません。そして、いま合うタイプと半年後に合うタイプは変わります。最初の一つで決めきらなくていいんです。
タイプ1:体験活動型|岩手はここが面白い
ぐるぐるの森(盛岡市・動物公園ZOOMO内)
動物園のなかにあるフリースクールです。2024年4月に開設されました。火・水・木の開所で、火曜は動物園での活動、午前は学習の時間があります。
なぜこれが良いと思うか、説明させてください。
不登校の子の多くは、人と目を合わせるのがしんどい状態にあります。話しかけられるのも、名前を呼ばれるのもつらい。そういうときに、動物は何も聞いてきません。「学校どうするの」とも「明日は来られる?」とも言わない。ただそこにいる。
そして動物の世話は、やれば結果が出ます。餌をあげれば食べる。掃除すればきれいになる。勉強のように、努力しても成果が見えるまで時間がかかるものとは違います。自信を取り戻す最初の一歩として、これ以上ないくらい理にかなっています。
動物が好きなお子さんなら、岩手ではまずここを見に行ってください。
たきざわスポラ(滝沢市・馬っこパーク内/NPO法人Future Seeds)
ここも体験活動型です。自然体験、社会体験、科学体験、調理体験。定員は約10名。
そして利用料は無料です(一部実費負担あり)。対象は小学1年生から高校3年生。さらにひとり親家庭など経済的に課題のある家庭を優先して受け入れています。
この「優先受け入れ」という設計を、僕は評価します。不登校の支援で取りこぼされやすいのは、お金がない家庭です。月2万円3万円のフリースクールは検討の対象にすらならない。無料で、しかもそういう家庭を優先すると明言している場所が県内にあることは、知られるべきだと思います。
馬っこパークという立地も面白い。馬がいる場所です。動物園のぐるぐるの森とあわせて、岩手には「動物と過ごせるフリースクール」が2つあるということになります。
虹の学園(一関市花泉町/一般社団法人虹パーク)
廃校になった小学校の校舎を使ったオルタナティブスクールです。2024年4月に開園しました。
学校に行けなくなった子が、学校の建物で過ごす。矛盾しているようですが、実はこれが合う子もいます。建物がつらいのではなく、そこで起きたことがつらかったからです。同じ形の場所でも、中にいる人と流れ方が違えば、別の場所になります。
タイプ2:学習支援型|勉強と出席扱いが心配なら
YUME School 盛岡校(盛岡市盛岡駅前通/一般社団法人YUME)
岩手で料金と出席扱いの両方を公式に明示している、数少ない施設です。
費用は週1回コース 月額25,000円、週5回コース 月額45,000円(その他のコースとシステム利用料は要相談)。
そして出席扱いについて、「在籍の小中学校の学校長判断のもと出席日数としてカウント」と明記しています。
活動は幅広く、学び直し、ソーシャルスキルトレーニング、職業体験、実験、書道、楽器、スポーツ、料理、アート。対象は小・中・高校生です。
週1回コースがあるのが実務的に大きい。いきなり週5日は無理でも、週1回なら行けるかもしれない。そして学校と併用もできます。
盛岡ユースセンター/フリースクールblanket(盛岡市/認定NPO)
居場所を中心に、高卒取得のサポートも行っています。2025年4月に事業を継承して移転しました。盛岡市中央公園のBeBA TERRACE内にも拠点があります。
長く続いてきた団体が事業を引き継いで継続するというのは、地域にとって大事なことです。料金は公表されていませんので、直接お問い合わせください。
タイプ3:訪問・在宅対応型|まだ外に出るのが難しいなら
フリースクール花鶏学苑(あとりがくえん/宮古市神田沢町)
岩手の沿岸部で、「在宅対応」を明記している貴重な場所です。
居場所づくりと学び直しを組み合わせ、野外炊事やクッキングなどの体験活動も行っています。中等部については「在籍校での出席日数の確保をサポート」と明記しています。中等部は中学生、高等部は高校在籍中・中退者が対象です。
宮古は三陸沿岸の中心都市のひとつですが、沿岸部は施設が極端に少ない地域です。釜石、大槌、陸前高田には県の一覧に民間施設がありません。沿岸にお住まいの方は、まずここに相談してみてください。
第一学院中等部 盛岡(盛岡市大通)
オンライン中心で、AIを搭載したデジタル教材を使い、登校は月1回から4回という形です。「中学校での出席認定についてのサポート」があります。
通える場所が近くにない、あるいは毎日は無理という段階のお子さんには、この形が合うことがあります。
NPO法人わらすば/NPO法人もっともっと楽しい学校(北上市大堤南)
居場所、子ども食堂、学習支援を組み合わせて運営しています。星槎国際高校の技能連携校・サポート校の機能もあり、対象は小学生から高校生。
ここも食の支援まで手を伸ばしている団体です。家庭の状況ごと引き受けようとしている場所は、それだけで信頼できます。
タイプ4:オンライン型|通える場所が近くにないなら
岩手の民間施設18件の分布を見ると、偏りがはっきりしています。盛岡広域(盛岡・滝沢・紫波・矢巾)に8件、北上・花巻に4件、一関に2件。一方、沿岸南部は大船渡1件、宮古地区1件、県北は久慈1件・洋野1件。釜石、大槌、陸前高田、二戸、八幡平には、県の一覧に民間施設がありません。
岩手は本州でいちばん広い県です。内陸から沿岸へは山を越えます。冬は雪です。「県内にある」ことと「通える」ことは別の話です。
クラスジャパン小中学園(オンライン)
冒頭に書いたとおり、僕が代表を務めているサービスです。完全オンラインのフリースクールで、家にいながら参加できます。在籍校で出席扱いになる仕組みを整えていて、これまで2000人以上の子どもをサポートしてきました。
沿岸部、県北、県境の町村など、近くに通える場所がない地域にお住まいの方、まだ外に出るのが難しい段階のお子さんには、入口として考えてもらえたらと思います。
ただし岩手の場合、先に市町村の教育支援センターを確認してください。27市町村に31か所あり、基本的に無料です。まず無料で使えるものを確認して、足りなければ次を考える。その順番が正しいと思います。
見学のときに、必ず聞いてほしい5つのこと
ホームページとパンフレットだけでは、その場所の本当のところはわかりません。運営する側になって、余計にそう思うようになりました。見学に行ったら、この5つは必ず聞いてください。
1. 費用はいくらですか。何が含まれていますか
岩手ではこれを最初に聞いてください。県が公表している18団体のうち、料金を公式サイトに書いているのは2件だけでした。YUME School盛岡校(月25,000円/45,000円)と、たきざわスポラ(無料)です。それ以外は問い合わせないとわかりません。入会金、月謝、教材費、活動費。総額で確認してください。
2. 在籍校への報告書は出せますか。実績はありますか
出席扱いを考えているなら必須の確認です。岩手で公式に明記しているのはYUME School盛岡校と花鶏学苑(中等部)です。第一学院中等部は「出席認定についてのサポート」という表現です。「出せます」だけでなく、これまで何校で認められたかまで聞いてください。
3. 冬はどうなりますか。送迎はありますか
岩手ならではの、そして必ず聞くべき質問です。雪のあいだ、開所日や時間は変わりますか。内陸から沿岸へ、あるいは山を越えて通う場合、冬の運用を先に確認しないと、4月に決めて12月に通えなくなります。
4. 一日の流れを具体的に教えてください
時間割があるのか、来た子が自由に過ごすのか。ここがタイプの違いそのものです。「自由です」と言われたら、実際に昨日はどんな一日だったかまで聞いてみてください。体験活動型の場合は、雨の日や活動がない日に何をしているかも聞くといいです。
5. いま何人くらい通っていて、どの学年が多いですか
定員ではなく実際の人数です。たきざわスポラのように定員が約10名という場所もあります。中学生の子が行って、来ているのが小学生ばかりだと居づらい。その逆もあります。
そしてもう一つ。必ずお子さん本人を連れて行ってください。親御さんが気に入った場所と、本人が居心地よく感じる場所は、驚くほど一致しません。本人が玄関で足が止まるなら、それは答えです。
岩手の補助金と、公的な支援について
正直にお伝えします。岩手県にも、主要な市町村にも、保護者向けのフリースクール利用料補助は確認できませんでした。県が発行している不登校支援ガイドブックにも、補助制度の記載はありません。
ただし、岩手の場合は補助金がないことの意味が、他県とは違います。
県のガイドブックには、教育支援センターについて「利用料は基本的に無料」と明記されています。そして県内に31か所(27市町村)あります。
つまり岩手は、民間の月謝を補助するのではなく、無料で通える公的な場所を県内に行き渡らせるという方向を選んできた県だ、ということです。33市町村のうち27。この数字は、全国的に見てかなり優秀です。
具体的には、県立のふれあいルーム盛岡とふれあいルーム花巻(0198-27-2821)があり、市町村立では、ひろばモリーオ仙北・青山教室(盛岡)、ウイング〜翼〜(八幡平)、どんぐり広場(雫石)、石神ハート(岩手町)、フレンド滝沢、こころの窓(矢巾)、風の子ひろば(花巻)、ジョイントスクール(遠野)、なないろ(北上)、フロンティア奥州・えさし、たんぽぽ広場 山目・千厩(一関)、カラフル(平泉)、とんとん教室(大船渡)、陸前高田ジャンプスクール、若葉教室(釜石)、けやきルーム(大槌)、サーモン教室(宮古)、しぃれぼ(山田)、あすなろ(久慈)、種市・大野教室(洋野)、おあしす(二戸)などがあります。
民間施設がない釜石、大槌、陸前高田、二戸、八幡平にも、公的な教室はあります。ここは強調しておきたい。「近くに何もない」とあきらめる前に、必ず確認してください。
そのうえで、もうひとつの選択肢が放課後等デイサービスです。発達に特性があって受給者証が取れる場合、世帯年収が約890万円までなら月額上限4,600円、非課税世帯は無料で使えます。
なお、岩手県には学びの多様化学校(旧・不登校特例校)の設置がありません。東北では宮城に3校、福島・秋田・青森に各1校ありますが、岩手にはまだない。ここは今後の課題だと思います。
在籍校で出席扱いにしてもらうには
フリースクールに通った日を、学校の出席として認めてもらえる制度があります。文部科学省が要件を定めていて、最終的には在籍校の校長先生の判断で決まります。
岩手には、他県にない便利なものがあります。「岩手県不登校支援ポータルサイト」です。
このサイトは、子どもの状態を4段階(教室に入れない/学校に行けない/外出が難しい/部屋から出られない)に分けて、それぞれの段階に応じた支援策を提示しています。
この整理の仕方が、僕はとても良いと思います。不登校と一口に言っても、教室に入れないだけの子と、部屋から出られない子では、必要なものがまったく違います。それを最初から分けて示している県は多くありません。
そして「外出が難しい場合」の項目では、ICTを活用して自宅や別室と教室をオンラインでつなぐ方式を案内しています。しかも「直接の会話ではなく、リアクションボタンや学習アプリでの参加でよい」としている。文部科学省の出席扱いの要件も参照しています。
つまり岩手県は、「カメラの前でしゃべれなくても出席扱いになりうる」ことを公的に示しているということです。これは知っておく価値のある情報です。
手順はシンプルです。まず、通おうとしている場所に「在籍校への報告書を出してもらえますか」と確認します。次に、在籍校の担任の先生に相談します。そのうえで、毎月の活動報告が学校に届く形をつくる。これで校長先生が認めれば、出席として記録されます。
ひとつだけ言わせてください。出席日数のために子どもを追い立てないでほしいと思っています。出席扱いはあくまで、その子が安心して次に進むための道具です。目的ではありません。
岩手全域から、もっと網羅的に探したい方へ
この記事では、県が公表している18団体のなかから、特徴がはっきりしている場所を中心に紹介しました。県は「市町村教育委員会から情報提供があった団体のうち、ホームページへの掲載を希望した団体」と注記していますので、この一覧がすべてではありません。お住まいの市町村から探したい方は、明光フリースクール公式メディアの岩手県のフリースクールと補助金一覧もご覧ください。
最後に
僕が不登校だったころ、親は相当悩んだと思います。でも最終的に「行かなくていい」と言ってくれました。あの一言がなかったら、今の僕はいません。
学校に行かない選択が、その子の可能性を狭めていいはずがありません。学ぶ場所は、学校以外にもあります。フリースクールはその一つです。
岩手を調べていて、いちばん心に残ったのは動物園のなかの学校でした。誰かが「動物園にフリースクールを作ろう」と言い出して、園の側が「いいですね」と答えた。その会話があったから、いま、人と目を合わせるのがつらい子がキリンを見ながら過ごせています。
制度でも予算でもなく、誰かの思いつきが子どもを救うことがあるんだと思います。
そして繰り返しますが、最初に選んだ場所が合わなくても、変えていいんです。合わなかったのは、その子のせいでも、その場所のせいでもありません。ただ、まだ出会えていないだけです。
この記事が、その出会いの手がかりになればうれしいです。





























